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『のぼうの城』と『人生の特等席』

2012.11.1

 秋の深まりと共に、上映される映画の芸術度も高まり、残念ながら映画館の入場者は減少していくのが例年なのですが、今年の11月はちょっと違います。作品の揃い方がとても充実しているのです。

 『のぼうの城』は8月にも書きましたが、この映画は2003年の城戸賞(新人シナリオライターの登龍門)を受賞したシナリオ(タイトル「忍ぶの城」)を映画化しようとしましたが、製作委員会に参加する企業が少なく、製作できませんでした。そこでプロデューサーは、シナリオ作家に小説化することを提案。シナリオ作家にとっても初の小説挑戦でしたが、見事に完成させ、2007年「のぼうの城」として出版。翌年、本屋大賞第2位に選ばれ、ベストセラーに。2008年秋、映画化正式決定。2009年クランクイン。2010年クランクアップ。しかし編集中に東日本大震災発生。水攻めの映画なので、公開を2011年年9月から一年延期。水攻めのシーンを大幅にカットして映画は完成しました。さあ、いよいよ公開です。ほぼ10年がかりの、映画人たちの執念の映画です。じっくりとご覧ください。そしてクチコミで大ヒットさせてください。いい映画を作らせ続けるのはいい観客です。映画の公開時期としてはベストシーズンではありませんが、この映画をコケさせたら、映画ファンの名がすたります。がんばりましょう。

 11月23日からのクリント・イーストウッド主演『人生の特等席』は今年度ベスト・ワンの秀作です。実は4年前『グラン・トリノ』で俳優終了宣言をしたクリント・イーストウッドがなぜまた主演するの? と思って試写を見たら、これが素晴らしい! こんな心温まるストーリーと出会ったら、もう一度役者に復帰したくなるのも"納得"の感動作です。若い観客たちには、人生の意味を考えていただき、人生のたそがれ時に差しかかっているシニアの方々には、「もう一度花を咲かせよう!」と奮起していただきたいものだと思います。もうひと花といっても、そんな大きなことでなくていいんです。投げないで、向き合うだけで、人生は特等席になるんです。イーストウッドは、ほんとうにいい映画人生を送っている。見ているだけで幸せになる映画です。

 『任侠ヘルパー』がかなりいいらしいです。でもまだ試写が観れていません。テレビドラマがスタートですが、映画としてかなりいいらしいのです。深いファンの方はきっとチェックしてない映画だと思いますが、先に観た方のクチコミをしっかりチェックして、よかったら見逃さないでください。私も劇場公開で観ることになりそうです。

 『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』は、映画というよりは、ステージを見せられたような印象が残る不思議な映像体験です。

 『カラスの親指』は数年前に原作を読んでいて、それでもしっかりラストまで楽しめましたので、原作を読んでいない方は10倍楽しめます。

 10月から上映を始めて、いつまで上映するんだと思う、静かな大ヒット作品があります。『最強のふたり』です。車椅子の大富豪と、とんでもない介護人の感動実話。これは絶対観ないと! とクチコミでの大ヒットです。

 『あの日 あの時 愛の記憶』は、1週間の限定上映ですが、実話から生まれた衝撃のラブストーリーです。おすすめします。

2012年10月31日
(フォーラムネットワーク 代表 長澤裕二)

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