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2017.6.23
カンヌ映画祭のもう一つの顔、フィルムマーケットについて
FORUM INTERVIEW -vol.1
毎年5月はカンヌ映画祭の季節。映画スターの華やかなレッドカーペットがニュースを賑わせる一方で、同時に開催されるフィルム・マーケットと呼ばれる映画の見本市に世界中の映画関係者が参加して、映画の権利を売買しています。私たちがいつも見ている外国映画が買い付けられる舞台裏を垣間見たくて、いつもお世話になっている配給会社ギャガさんにお邪魔して、カンヌから帰国直後の水野貴夫さんにお話を伺いました!
―数ある国際映画祭の中で、カンヌ映画祭はどのような位置付けにあるのでしょうか?
我々配給会社が買い付けに行くマーケットは大きく4つあります。2月のベルリン、5月のカンヌ、9月のトロント、11月のAFM(サンタモニカ)です。ベルリンとカンヌはコンペのある映画祭が併設されているマーケットです。9月のトロントは審査員が選ぶコンペは無く、観客賞が最高賞として設定されているのですが、ここで観客賞を取った作品がアカデミー賞の作品賞にノミネートされるという事がここ10年ほど続いています。そのためスタジオも、その後の賞レースに向けて口コミなどの盛り上げを作るために、クオリティムービーはトロントで初披露する傾向があり、最近は重視されるようになってきました。11月のAFMはマーケットだけですので、良い作品の新作披露はトロントに持って行かれて試写は今ひとつですが、3~5年先までの企画の発表などが充実しています。カンヌはAFMからちょうど6か月離れていて、興行的に成功しそうな新作の企画発表が多い上に、併設された映画祭はアート作品のコンペが大変充実していますので、映画の幅が広いと思います。
―映画祭ではどんな一日を過ごされますか?
毎朝8時から朝会議をやって、前の日の報告とその日の動きの確認を行います。そのあと僕は9時半からマーケット試写とブース巡りをして、だいたい夜の10時頃に最後の試写が終わります。
―1日何本くらい見るのですか?
6~7本ですね。
―ハードですね!全部最後まで見るのですか?
まれに途中で出ることもありますよ。今回ある試写に行ったら、キャストが豪華なので他社の買い付けも大勢いたのですが、映画があまりにもひどくて、開始30分後にはすっからかんになりました…。毎日ホテルに戻ってからはその日の試写レポートを書いて、試写は英語なので次の日に見る作品の予習もして、終わるとだいたい夜中の3時ごろになってしまいます。3時間だけ寝てまた朝会議の準備をするので、体調管理が難しいです。
―買い付けた作品について教えてください。
今回のカンヌでは新しく5本の劇場公開作品を買い付けていますが、残念ながら売り手側の事情でまだ発表できません。今秋公開する、注目度の非常に高い1本もあるのでお話ししたいのですが…。映画祭前にすでに買っていた作品では、『アーティスト』のミシェル・アザナビシウス監督の新作があります。ゴダールが『中国女』の主演女優と結婚して別れるまでを描いた映画です。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督の『HOW TO TALK TO GIRLS AT PARTIES』も企画の段階で買っていました。
―今回のカンヌではNetflix騒動が話題になりましたが、どうご覧になりましたか?
ちょうど僕も行きの飛行機で、昨年度のアカデミー賞作品賞にノミネートされた『最後の追跡』を見たのですが、これもNetflix製作なので日本では劇場公開されないまま配信されているんですよね。アカデミー賞作品賞にノミネートされていながら劇場公開しないのかと思っていたのですが、実際見るとやっぱり素晴らしい映画なんです。もし劇場でやったらヒットするだろうと思うくらいいい作品だったのが、最初から配信でしか見られないのはどうなんだろうと思っていたところに、ちょうどアルモドバルのあの発言がありました。カンヌ映画祭のコンペ選考委員にしてみても、Netflix製作の2作品が劇場公開されないという事は知らなかったと思います。あとから配信のみで、劇場では公開しないことが分かり、映画祭としては今後、フランスで劇場公開しない映画は対象外とする公式見解を出したのだと思います。最初から映画館で公開しないことが決まっている映画を映画祭でコンペ上映するのはちょっと違うのではないかと個人的には思いますし、そういう意見の方が多いのではないかと思います。
<インタビューを終えて>
世界では毎年約5,000本の映画が劇場公開されていると聞いたことがありますが、昨年日本で劇場公開されたのは1,149本、そのうち539本が洋画でした。膨大な数の作品群からどの映画を買い付けるのか、水野さんのような目利きの方々がマーケットを奔走されているのですね!またNetflix騒動については、これが今後どんな余波を生むのかとても気になるところです。
水野さん、貴重なお時間を割いていただき、本当にどうもありがとうございました!
(フォーラム番組編成 橋浦 綾)
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