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2023.7.24
シャンタル・アケルマン映画祭2023
既成の映画ルーティンをことごとく破壊し、観る者を全く新しい地平へと誘う映画監督、シャンタル・アケルマンの2回目となる特集上映。昨年、イギリス映画協会が10年ごとに選出する「史上最高の映画(The Greatest Films of All Time)」にて見事1位に輝いた『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』ほか全6作品5プログラムを日替わり上映。
7/28(金)~8/3(木)上映スケジュール
街をぶっ飛ばせ
※『家からの手紙』と併映
監督・出演:シャンタル・アケルマン
撮影:ルネ・フルシュター
1968年|ベルギー|モノクロ|12分
撮影:ルネ・フルシュター
1968年|ベルギー|モノクロ|12分
当時18 歳だったアケルマンが、ブリュッセル映画学校の卒業制作として初めて監督、主演を務めた記念すべき処女作。花束を手にアパートの階段を駆け上がったひとりの女。鼻歌を口ずさみながらパスタをつくって食べ、調理器具をばらまき、洗剤をまき散らし、マヨネーズを浴びる。狭いキッチンで縦横無尽に暴れ回った彼女の支離滅裂な行動は、驚くべき事態で幕を閉じる。その後の反逆的な作品群の原点とも言える破壊的なエネルギーに満ちた、あまりに瑞々しい短編。
家からの手紙
※『街をぶっ飛ばせ』と併映監督:シャンタル・アケルマン|撮影:バーベット・マンゴルト、リュック・ベナムー
1976年|ベルギー・フランス|カラー|85分
1976年|ベルギー・フランス|カラー|85分
路地、大通りを走る車、駅のホームで電車を待つ人々、地下道…… 1970年代ニューヨークの荒涼とした街並みに、母が綴った手紙を読むアケルマン自身の声がかぶさる。固定ショットやトラベリングで映し出される公共のロケーションと、時折車の音に掻き消されながらも朗読される、愛情溢れる言葉の融合。都会の寂しさと、遠く離れた家族の距離がエレガントな情感を持って横たわる、映画という〈手紙〉。
ゴールデン・エイティーズ
監督:シャンタル・アケルマン|脚本:シャンタル・アケルマン、ジャン・グリュオー、レオラ・バリッシュ、ヘンリー・ビー ン、パスカル・ボニゼール|撮影:ジルベルト・アゼヴェード、リュック・ベナムー
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ミリアム・ボワイエ、ジョン・ベリー、リオ
1986年|ベルギー・フランス・スイス|カラー|96分
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ミリアム・ボワイエ、ジョン・ベリー、リオ
1986年|ベルギー・フランス・スイス|カラー|96分
美容院やカフェが並ぶパリのカラフルなブティック街を舞台に、そこで働く従業員たち、客たちが恋模様を歌い上げるミュージカル。パステルカラーの衣装に身を包んだ登場人物たちが歌い踊るロマンティックな浮遊感と、愛に対するアケルマンの容赦ない視線が巧みにバランスされている。シナリオにはフランソワ・トリュフォー監督作品に欠かせないジャン・グリュオー、アンドレ・テシネ監督『ブロンテ姉妹』(79)やジャック・リヴェット監督『美しき諍い女』(91)を手掛けたパスカル・ボニゼールと名脚本家が参加した。
一晩中
監督:シャンタル・アケルマン|撮影:カロリーヌ・シャンプティエ、フランソワ・エルナンデス、マチュー・シフマン
出演:オーロール・クレマン、チェッキー・カリョ、ヴェロニク・シルヴェール、ヤン・デクレール
1982年|ベルギー・フランス|カラー|90分
出演:オーロール・クレマン、チェッキー・カリョ、ヴェロニク・シルヴェール、ヤン・デクレール
1982年|ベルギー・フランス|カラー|90分
ブリュッセルの暑い夜、眠りにつくことのできない人々。ある者は恋人の腕のなかに飛び込み、ある者は街に繰り出し、夫婦は語らい、そしてある者はバーでダンスを踊る……。官能的な熱を帯びた一晩の中で連結していく、数々の出会いや別れ。詩的な青色の夜を描き出す撮影監督の一人に、ジャック・リヴェット監督『北の橋』(81)、80年代のジャン=リュック・ゴダール監督作品、近年ではレオス・カラックス監督『アネット』(2021)を手掛けた名女性キャメラマン、カロリーヌ・シャンプティエ。
ジャンヌ・ディエルマン
ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地
監督・脚本:シャンタル・アケルマン|撮影:バーベット・マンゴルト
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
1975年|ベルギー|カラー|200分
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
1975年|ベルギー|カラー|200分
ジャンヌは思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしている。湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、“平凡な”暮らしを続けているジャンヌだったが……。アパートの部屋に定点観測のごとく設置されたカメラによって映し出される反復する日常。その執拗なまでの描写は我々に時間の経過を体感させ、反日常の訪れを予感させる恐ろしい空間を作り出す。ジャンヌを演じるのは『去年マリエンバートで』(61)、『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(72)のデルフィーヌ・セイリグ。
東から
※日本語字幕無し監督:シャンタル・アケルマン|撮影:レイモンド・フロモン、ベルナール・デルヴィル
1993年|ベルギー・フランス|カラー|115分
1993年|ベルギー・フランス|カラー|115分
ポーランドやウクライナ、東ドイツといった、ソ連崩壊後の旧共産主義国の都市とそこで暮らす人々の姿をとらえたドキュメンタリー。ナレーションや場所の名前をも排して、アケルマンは時折市井の人々の家庭の様子を散りばめながら、果てしない距離や文化情勢、生活様式を記録した。洞窟のような駅のホーム、カメラを見つめる人々の表情、寒空……。透徹した眼差しがその場所で確かに流れる時間と観客を近づけ、好奇心を駆り立て、映像そのものが静かに語りはじめる。
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